ウクライナアーティスト
インタビュー
「扱われたいように相手を扱う
  優しさはブーメランのように戻ってくる」

Valery Kamelkova
ヴァレリア・カメルコワ

(アーティスト/ ウクライナ・リヴィウ在住)
プロフィール
ウクライナ 、キーウ出身の造形アーティスト。ロシアのウクライナ侵攻により現在ウクライナ西部のリヴィウへと避難移動されている。
日本同様、ウクライナには妖怪の概念があり、カメルコワはウクライナの妖怪文化に影響を受け、独自のモンスターを数々生み出す。
絵本イラスト、書籍や音楽アルバムのカバーなど数多くの作品を世に発表している。

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これまで多くのイラストを手がけられていますが、このプロジェクトを通じた収益から、ウクライナの動物園をサポートされたいのには、どのような想いがあるのでしょうか?
現在の戦争下にあり、動物園は非常に困難な状況に陥っており残念ながら多くの動物が亡くなってしまいました。
例えばヤスノゴロドカ村にある小さな動物園では、約150羽のダチョウ、50匹のバッファローとラマが死んでしまいました。

この大きな損失に私たちはとても傷つきました。
人々への支援はより簡単ですし、私達人間は自身の世話をすることもできますが、動物園の動物たちは最も悲劇的な状況にあります。
昔、動物園で子どもとサイにお肉をたべさせることがありました。

サイは絶滅の危機に瀕していることを知ったとき、そして動物園に支援がいき届いていない状況に涙をこらえることができませんでした。
あなたはキーウ出身で、現在はリヴィウに滞在しているとのことですが、なにか現在お困りや問題はありますか?私たちに共有したいお話はありますか?
残念ながら私たちはキーウから逃げなければなりませんでした。
2月24日の夜、最初の爆発から目が覚めたのですが、これが本当に起こっていると信じることができず悪夢を見続けているかのような状況でした。

人々はキーウを一斉に去り始めました。
しかし交通渋滞により実質上封鎖状態となっており、大都市に暮らすことはトラップの中にいるようなものであると気づきました。
このような不利な状況では立ち去ることはほとんど不可能ですがそれでも地方に着きました。

そこでは地下室のある家を与えられ、安全に生活ができると思いましたが、その考えは間違っていました。
私たちは地下室でほとんど全ての時間を過ごしました。爆発音に怯えた動物たちは完全にごはんを食べられなくなりました。

ある夜、強い爆発音が轟きました。私たちが外に出ると、近くの石油貯蔵所が燃え、夜空全体が赤く染まっていました。それは非常に不吉な景色でした。

© UNICEF_UN0597997_Skyba for The Globe and Mail
キエフ2022年2月25日撮影

しかし私の懸念は、喘息の息子がその煙を吸い込んでしまう事でした。吸入器を買う場所がなく、食べ物も店から完全になくなっていました。

地下での生活がちょうど一週間を過ぎたころ、ロケットが私たちの上を飛んでいき爆発がもう近くまで来ているのが分かり、私たちはそこを去ることに決めました。
しかし、道路で車に乗った人々が撃たれ家族全員がそのまま燃やされたという情報もあり移動することも非常に恐ろしいことでしたが、私たちは動物を連れて車を走らせました。
私たちが恐れていた道路の危険箇所を通過することができたのは幸運なことでした。そこから私たちはリヴィウ地域に向かうことにしました。
リヴィウについてからは安全な生活になったのでしょうか?
ロケットはここでも飛んでおり、空襲警報が定期的に鳴りますが、ポーランドとの国境が近く、極度の危険が発生した場合には、子どもをウクライナから逃がすことができます。
もちろん、私たちはキーウに戻る希望を失ってはいません。
キーウには、私たちと街を出ることを拒否し今もそこにとどまる友人も親戚もいます。
私は戦争の終わりが来て、以前の暮らしに戻るのを毎日待っていましたが、今はそのようには考えず、新しい環境で生活し、適応し、創造性の出口を探しています。

明日はどんな日になるか、どこにいて果たして生きているのか、そういったことを考えないように。
外国へ向けたコメントなどありますか?
今回の戦争が始まったことで、様々な出来事を振り返りながら共有したいと思います。
幸運なことに、リモートで出来る仕事は今もできています。不動産や高級品ではなく、貴方自身が前に進むことや学びに投資することをお勧めします。
結局のところ、人は最低限の物があれば充分で、お金は浪費にではなく災難がふりかかる時のために節約する方が良いです。
たとえそのような災難が訪れなくても、お金があれば助けになりますし、新しい条件に適応するまでの間、しばらくは生きていけます。
移動できることも重要なことだと思います。車を持つ多くの家族の命は救われましたが、残念ながら車を持っていない人々は紛争地域を離れることができませんでした。

そして何より人間関係は最大の価値でしょう。
あなたが扱われたいように人々を扱わなければなりません。
優しさはブーメランのように戻ってくるものです。
なぜ妖怪を創作されているのでしょうか?
ウクライナには妖怪文化があります。日本も妖怪文化を持つことをお話しの中で知りました。
住む場所を失ったら彼/彼女らはどこにいくのでしょうか。
恐ろしくも見える妖怪ですが実際には優しい存在として私は創作しています。

最終的にはまるで彼らが自分で選択したかのように生まれてきますし、私のエネルギーの一部を吸収して生まれてくるようにも感じています。

今回のロシアとの戦争がはじまるとともに、創作したキャラクター達も怯えはじめたように感じています。
この気づきは予期せぬものでした。
特定の支援したい動物園はありますでしょうか?
また何故その動物園なのかお伺いできますでしょうか?
ハリコフにエコパーク動物園があり、そこに支援をしたいと考えています。そこではすべてが悪い方向に向かいました。
まず、そこでは地雷攻撃が行われ鹿の囲いが破壊されたのです。
9頭が榴散弾で死亡し、20頭が囲いを出て、エコパーク近くの森にたどり着きました。ライオンやトラは避難することができました。

エコパークとは別のニコラエフの動物園近辺では絶え間ない砲撃があり、ミサイルが4発落ちてきました。
もちろんそこにはシェルターはなく、動物を避難させることは不可能でした。

動物園は現在も週に2、3日オープンしていますが、チケットの売り上げが十分でないため、動物園のディレクターは、いつか来ることが出来るようになったら使えるようにとオンラインでチケットを購入を求めています。

キエフ地域のエコパークも占領中に大きな被害を受けました。
ダチョウは150羽、水牛、羊、ラマは何十頭も殺されました。
キエフから30㎞のところにある「ヤスノゴロドカ」では、「300羽のダチョウのうち160羽が良き残りましたが、有蹄類の動物は150頭のうち50頭ほだけが生き残りました」
その動物園はウクライナ最大級の動物園でしたが、今、この動物園には助けが必要です。

別の動物園、Ⅻモンクスも美しい動物園ですが、同じく多くの助けが必要な状態です。
動物向けのシェルター、食料、温度調整などがサポートできたら嬉しいと考えています。